だって探偵なんだモン♪
女子高生探偵、根津愛ちゃんの初短編集。デビュー長編は別にある。 「カレーライスは知っていた」愛ちゃん小学生時代の事件を、名刑事のお父さんが鮮やかに解決。しかし、この署にはナンバーディスプレイは無いのか。なんてことはない真相だけれど、あんなものを食べちゃうお父さんに度肝を抜かれる! 他にも「スケートおじさん」「コロッケの密室」「死への密室」「ネコマンガ」などのほほえましい短編を収録。ミステリ的に、おおっ!?ということはそんなに無いけれども、始めから(それこそ、本の表紙から!)あとがきまでも愛ちゃんへの作者の愛があふれていて、読んでいて情にほだされてしまう1冊なのであった。
架空と現実の間で
根津愛は当然、架空の探偵だ。しかし、彼女は十分に魅力的である。 理由は生き生きとした愛川さんの文章にもあるのだが、劇中に潜む彼女自身のパーソナルもだ。 この短編集に関しては小説として読むよりも根津愛を知るための本だであり、彼女からの挑戦状だと思って欲しい。 その上で他の彼女が活躍する本を読んでくれれば楽しさ倍増。
ゆっくりと舞台装置は整っていく
「夜宴」で長編デビューを飾った美少女探偵・根津愛が登場する短編集が本書である。ここに収められた作品は皆、読者への挑戦を含んでいる。しかしそれだけで普通の犯人当て小説だと思っていると手ひどく裏切られることになる。 舞台は実に多くの手間を掛けて作り上げられている。本書に収録された短編中では他の事件、「堕天使殺人事件」のこととか、「夜宴」としてまとめられた事件のことが言及されている。「夜宴」の中でも、別の事件としてここに収録された短編での内容が言及されている。 本書の表紙写真は根津愛のモデルとされているという実在の人物を撮影したものだという。また書中には、(実在の)愛が描いたとされるマンガ、6歳当時の写真が収録されている。念のいったことにあとがきは父親によるもの。そして収録作中で次の長編に関する予告が為されているのだ。 フェアを貫きつつ不可能興味を追求し、ゲーム性を多分に含みつつミステリとして成立させる。愛川氏はどうやら、これから発表されるであろう作品と合わせて、今までになかった探偵小説世界を構築することを狙っているようだ。根津愛を取り巻く舞台装置は、まだこれから重層的に、ゆっくりと準備されていくものらしい。楽しみだ。
推理だけ
昨今ありがちな「推理」「犯人探し」に偏りすぎの作品で小説本来の魅力に欠ける。せめて人物描写で補って欲しいところである。写真やマンガ、手紙を挿入しているのは却って興醒め。
原書房
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