ゼロからの挑戦―私は、いかにしてF1で世界を制したか (先見サラリーマン・シリーズ (8))





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世界を相手に戦える監督

 今までのホンダ総監督の中で最も視野が広く、様々な分野において才能豊かな人物でしょうね、この桜井氏は。技術論のみならず政治的駆け引き、「勝つことに対する情熱」には目を見張るものがある。しかも観念に囚われることなく現実的かつ合理的に物事を整理し目標に突き進むあの突進力は、あのセナに共通するものがある。だからこそあのセナも絶大な信頼を彼に寄せていたのだろう。その彼の言う言葉の一つ一つは物凄く重みが有る。説得力がある。世界を相手にするなら、これくらいの器量は必要なのでアル。世界で勝つためには技術だけでなく、それを活かす政治的手腕・駆け引きも絶対不可欠だという事が良く分かる。
 それこそ今どうしてホンダが勝てなくなったのかもこれを読めば分かるはず。今のホンダは「フツーの会社」に成り果ててしまっている。コツコツと言われた事のみをやり,ただ黙ってる。「勝つ」という事にトンと執着しない。呑気なものだ。常勝ホンダの基礎を作ったのがこの桜井氏と言っていいだろう。その後の後藤氏までくらいはマァ何とかやって来れたが,その後ともなるともう目も当てられない。「勝つ」という事がどういうことなのか今のホンダチームには分かってないのだろう。



世界の評価を変えた男

桜井淑敏氏がF1の監督になって、初めてサーキットに入ろうとしたとき係員に止められた。「ホンダの桜井だ」といっても、通じなかったそうだ。F1界でホンダは無名だったのだ。無残な戦績の中で桜井氏は決意する「ガソリンを燃やし切る理想のエンジンを開発するぞ」。「従来型エンジンを改良すべき」という川本信彦社長の反対を押し切り、開発・投入。1985年デトロイト・グランプリでついにチェッカーズ・フラグが舞った。桜井氏、ホンダ、ウイリアムズチームの誰もかもが泣きはらし抱き合った。ホンダの快進撃が始まる。桜井氏は、F1界で「現代のチンギスハーン」と畏怖されるようになる。もはや、サーキットで追い払われることもなくなった。先端技術分野で苦闘し、勝利する姿が爽快である。苦難を極めたCVCCエンジンの開発の話しも泣かせる。本田宗一郎は敢然と「エンジン内部で有毒成分を燃焼させる、燃焼方式」(ほとんどが触媒方式の開発をしているとき)を掲げ、桜井氏とともに技術者の誇りを賭けた闘いに突き進み、とうとう、NOXの数値が1/10になる日がやってくる。ブレーク・スルーが達成された荘厳な場面は、読者を激しく感動させる。日本の自動車産業は世界の尊敬を得るようになった。読み継がれるべき名著である。



祥伝社